安倍晋三首相がトルコのエルドアン首相と会談し、原子力プラントの受注を取り付けたのは朗報。

請け負うのは三菱重工業―仏アレバ連合らしいけど、正直ATMEA(というより海外向けプラント)は詳しくないので、重工のサイトに公開されている情報の中から気になった5点について所感を。
https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/464/464009.pdf
1.保守作業量の低減
保守・点検・補修の作業量はコスト面の問題だけでなく、原発のリスク要因のうち大きな割合を占める「ヒューマンエラー」に直結するので、これは結構重要。
原発に限らず、人間がミスを犯す確率は概して機器の故障率より高い。ましてや、日本のように機器故障率が全般的に低い国なら尚更)
ちなみに沸騰水型では、BWRからABWRへの改良で原子炉格納容器内のスペースを拡張しているため、現行最新型は福一等の旧式より保守・点検しやすい設計となっている模様。
2.非常用電源設備
原発で外部電源喪失時のバックアップとしてディーゼル発電機が採用されている理由って、短時間で起動して必要な電圧を確保するためなんだけど、ガスタービンも検討しているってことは時間的制約が解決されているのかな?
3.中央制御室のディジタル式計測制御設備
制御設備に用いられる回路は時代とともに、「電磁リレー式(コイル+手動スイッチ)→ソリッドステート化(半導体+手動スイッチ)→デジタル化(マイクロプロセッサ+タッチパネル)」と変化。
これにより、電気盤がコンパクトになっていったらしい。しかも、駆動部分が減るから寿命も伸びるし、消費電力は減少。その代わり、部分的な設計変更が難しくなるらしいけど。
4.3系列構成の安全系
現行の2系列と比べて、非信頼度(機能喪失確率)が単純計算で3/2乗になるわけだから、非常に重要。
厳密には共通原因故障とかあるけど…。
5.高性能蓄圧タンク
低圧ポンプ不要になるのも何気に効果大。ポンプ自体だけでなく、それを冷やす配管周りなんかも不要になるわけで。
そういえば、2.で疑問だったガスタービン発電機でもOKな理由も書いてある…。
 
そういえば、今回の契約に付随して原子力分野の大学をトルコに設立するという計画も、大きな意義がありそう。なにせ、理系だけでも
核物理、熱流体、材料、機械、電気、制御、水化学etc…。と、多種多様な学問が絡んでくるのが原子力工学なので。
ただし、安全性(信頼性)というものに殊更シビアなこの業界では、最新の技術ではなく他業界で十分実績のある技術を用いることが多いけど。
(ある意味、ゲーム業界で言うところの「枯れた技術の水平思考」?)
 
 
ところで、この「原発廃炉を求める団体が貸し線量計を改造」という記事…
http://science.slashdot.jp/story/13/01/30/0147232/
自分は制御工学とか電気工学の専門家じゃないけど、4台の計器中1台が極端な値を示したときに残り3台の故障を真っ先に疑うとは、またまたご冗談を。
つ「シグナルセレクタ」「2 out of 4」
あと、「あとの3台は実験に不誠実なので除外しました!」というコメントがツボって、久々にMOSAIC.WAV聞きたくなったw